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「そうなんだ。あっ、そうだ。リリィも今年で成人だから、祝祭の主役の一人なんだよ」 「リリィ?」  ポリメロが名前を聞き返す。  リリィはリリシスの愛称だが、些か女性的な響きではある。それが気になったのかもしれない。 「僕達はそう呼んでいるんだ。本当の名前はリリシスっていうんだよ」 「なるほど。……リリシス。成人おめでとう」 「ありがとうございます」  祝いの言葉に、軽く会釈して応えた。  ロットは横で「今年の祝祭のご馳走は何になるのかなぁ」などと楽しげに呟いている。  太陽の祝祭は、アーレストの人々が信仰する神であるパーリシュアに、作物の順調な生育に欠かせない日照の安定を祈願する日だ。  アーレストでは快晴の日が極端に少ないが、それは太陽の神パーリシュアの慎み深く恥ずかしがり屋な性格が空に映されているからなのだという。  しかし一年の中で昼の長さが最も長くなる日だけは、掛かる雲を払い、人々を日の出から日没まで明るい光で包んでくれる。そこで初代の王は、光の祝福を受けたその特別な日を太陽の祝祭と定めた。  祝祭はやがて、成人の祝いの舞台にもなった。その年に成人を迎えた者が祭礼用の装束に身を包み、祈りの儀式の一部を担う。近く十八歳の誕生日を迎えるリリシスも、今年の祝祭の舞台に立つ予定だった。 「ポリメロは王都から来たんだろう? あっちでは祝祭はどんな感じだったのか教えてよ」  ポリメロとの会話が途切れたのを見計って、ロットがすかさず間に入って来る。  その好奇心に満ちた明るい声に、リリシスはまだまだ帰れそうにないと項垂れた。  
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