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「花畑はすぐそこのようだな。……行けるか?」
「勿論です」
ラグナールの問い掛けに、リリシスは力強く頷いた。
気持ちを態度で示そうと、今度は自分が彼より一歩先に行く。
「今日は随分と花畑が明るく見えるな。森の外の日差しはそれ程強くなかったが」
「太陽が顔を出したのでしょうか」
やがて全体をはっきり見渡せる場所まで来ると、その明るさの正体が明らかになった。
「すごい……」
「これは、驚いたな」
それは、森の中の広場を覆い尽くして咲き誇る一面のラナの花だった。
昨日までこの場所にあったのは白や薄桃の花ばかりで、ラナは一輪も無かったはずだ。
「昨日のことと、何か関係あるのでしょうか」
「分からない。このようなことは聞いたこともない」
パドラの最期の場所は、ラグナールに訊ねずとも分かった。
黄金に輝くラナの中、大人が両手を広げた位の大きさにぽっかりと地面が抉れた場所がある。
リリシスはゆっくりとその場所に近付くと、跪き、地面に頰を寄せた。
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