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「すまない。俺が悪いんだ。ポリメロに妬いていた」
「ポリメロ? でもポリメロさんは……」
「ああ。笑ってくれて構わない。くだらん嫉妬だ。君が好意を持ってくれていることが分かっても、それを向けられているのはあくまで俺が演じていたポリメロの方なのだと思っていた」
「ポリメロさんもラグナールさんも、本質的には何も変わりません。僕は、貴方の芯の部分が好きで……だから、好きになったのがどちらの貴方かなんて、何の問題もないんです」
リリシスの言葉に、ラグナールが「君らしいな」と目を細める。
「案外俺は嫉妬深いのかもしれない。君に限っては、だが」
「それは……」
「俺も、君が愛おしい。初めて誰かに嫉妬をしてしまう程に」
嫉妬の告白すら、相手がラグナールであれば喜びでしかなかった。
それどころか愛の言葉まで贈られ、胸は嬉しさにはち切れそうだ。木に囲まれた空間の中に立ち込めるラナの香りがますます濃密に感じられ、リリシスはむせ返りそうになる。
幸福のあまり言葉を詰まらせるリリシスに対し、ラグナールは「聞いて欲しいことがある」と改まった。
その思い詰めた様子に、つられてこちらも姿勢を正す。
「リリシス。大切な者を失ったばかりの君にこんな選択を迫るのは、配慮が無いとは思う。だが、もしも決断してもらえるならば……俺と共に、王都に来てくれないか」
「王都……」
予想もしていなかった言葉に、リリシスは後込んだ。
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