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「わっ⁈」
「来て!」
ドアが閉まると同時に、ロットにいきなり手を引かれた。そのまま引き摺られるような形で走り出す。
「リリィ、東の森に行こう!」
「友達の家に行くんじゃなかったの」
ロットがこちらを振り返り、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「本当のことを言ったら、お婆ちゃんに止められちゃうからね」
「止められるって……東の森に何をしにいくつもり?」
前を走るやんちゃな男の子が何を企んでいるのか察しがついてしまい、図らずも問い詰める声が出る。
「噂の男が、『彼方のヒト』なのか偵察に行くんだ。でもさ、気付かれないように、遠くから見るだけだから。大丈夫!」
やはり。村の大人達が近付いてはいけないと口を酸っぱくして言えば言う程、ロットにとってそこは魅力的な場所になってしまうらしい。
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