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「村には独特の閉鎖的な空気があることは否めないと思います。中には一生を村の外に出ず、終える人もいる。自分達とは違う身体的特徴を持つ者を見る機会が、そもそも圧倒的に少ないんです」
「それは言えるな」
リリシスは、以前から彼に尋ねてみたいことがあった。
「……貴方は、その瞳が何処から来たものなのかを知っていますか?」
「何処から、とは」
「自分の、出自についてです。僕は、自分が何者なのか、一体何処から来たのか……そういったことが一つも分からなくて。僕の姿は、アーレストの人々とあまりに違う」
髪も、瞳も、肌も。
神に祝福された姿だと人は言う。
しかし、リリシスはずっと自分自身に漠然とした得体の知れなさを抱いていた。
自分だけが違うこと、そしてそれが何故だか分からないことに、いつもどこかで不安を感じていた。
もしもこの容姿が突然変異であったとしたら。
両親は生まれた我が子の姿に驚いて、自分を捨ててしまったのでは——そんな想像すらしていた。
そんな日々の中で出会ったポリメロは、自分と同じく、周りの人々とは異なる色の瞳を持った人だった。
一方的な同族意識を持ってしまうと、ますます彼の背景が気になった。彼の話を聞くことで、何か自分の土台を形づくるものにも通ずる糸口を掴めるような気がしていたのだ。
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