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シガーキス
「ねぇあんた、ライターない?」
お互いの愛を深めて知り合って、月まで登ったあとの休みのひととき。
白いブラジャーと白いパンティを身につけて、今にも折れそうな白い体を見せびらかしながら言ってきた。
「ライター使ってねえんだよ。」
かく言う俺もパンツ一枚だけ着て、青い箱から1本取りだした。
「まだインフィニティ吸ってんだ。」
「ピースだよ。タバコはこれしか吸わない。」
「旅ができないんだね。私とずっとやってんのもそういうことでしょ?」
彼女はタバコを持ってただ俺が火をつけるのを待っている。行儀正しくお座りしながら。
蕩けた目は、俺のタバコを咥える口を見つめる。
「早く。」
「分かったよ。急ぐな。」
俺は持っているマッチに火をつけた。
先程まで俺達もこの火の熱さ以上に燃えていたのだが、今じゃ、この火が少し暖かく感じる。
咥えたタバコの先に火を近づけて息を吸う。
息を吸わなければ火がつかない。
一吸い目に肺に入る煙は、濃厚な体温を感じた。
「こっち向いて。」
君が言う。大体こういう行為をした後はこれをする。
俺はただ咥えたままで息を吸った。その間に彼女も顔を近づける。そのまま彼女の咥えたタバコの先が、燃える俺の先端に触った。
瞬間に燃え移る火の粉。君の口に入る煙が、君の頭に刺激を与え、一層目を溶かした。
俺は彼女のついたタバコを確認して、灰皿の上までタバコを下ろした。灰を落として吸おうとする。
その時、彼女が急に唇を、俺の口に貼り付けた。
着いた瞬間に息を吐いてくる。
彼女の体から入ってきた煙は、ただ、体の全体に刺激を走らせ、内側から熱いものを湧き上がらせてくる。
また月まで登れるほどの快楽を、体が欲する。
「あ、またやりたくなってる。」
小悪魔な顔を浮かべて見つめる君の顔が愛おしくて。ただ、頭を撫でてあげた。
そして吸い終わったタバコを擦り消し、ベッドへ彼女を押し倒す。
お互いの体から、先程の快楽の香りと、タバコのフレーバーを感じる。
大人な煙に酔いながら、また君と最果てを目ざした。
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