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目的を果たしたらしい予言者が去って、僕は草原の微かな風を堪能していた。なんだかすっきりとして、良い心地だった。
「わぅ~、よく寝ましたぁ」
彼女……サクラは僕と違って、眠っている間は深く深く熟睡して、目覚めるとすぐに思考がはっきりして、元気に行動出来る。だから遠慮なく、待ちわびていた問いを投げさせてもらえる。
「おはよう、サクラ。ちょっと訊きたいことがあるんだけど、いいかな」
「はい、なんでしょう?」
「サクラは、この世界に生きていて幸せかい?」
「……はい! サクラはソウジュ様のような、やさしくて、すてきな方のおそばで生きられて、とぉ~っても幸せですっ」
サクラは……イリサだった頃の記憶を持っていないのに。あの頃と全く変わらない気持ちのままで、僕に接してくれる。全く変わらず、同じ答えをくれる。
生まれてくることは、苦しみだけじゃない。生まれて来たからこそ感じられる幸せだって、確かにある。
苦しめることがわかっていながら「この世界に生物を創り出した」、僕の責任。だけど、彼女がこう感じてくれるなら、僕の選択は間違っていなかったんだと肯定出来た。
「ありがとう、サクラ。君と出会えて、僕も幸せだったよ」
「えへへ~……ソウジュ様が喜んでくださって、私も嬉しいです!」
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