ふたつの約束

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「ソウジュ様だって本当は、出来うる限りの時間彼女のそばにいられたら、その方がいいはずですよね?」 「クエス……僕の本当の望みは、さっき口にした通りだよ。彼女がずっと笑って、幸せに生きられる世界をこのまま続けていくこと。この星(地球)を守れるのなら、必ずしも、僕自身が彼女と共にいなければとは求めない」  小唄(コウタ)は、クエスが転生した人間だ。その名前は人間社会では「儀式の為に捧げる命」を意味している。元より、クエスは僕の為に「この星の苦しみの半分を担う」と言い出すような気質で、それを的確に表した命名と言えるのかもしれないけれど……。僕にとってはなかなか口にし難い。決して人前では出来ないけれど、他に誰もいない密室では僕は彼をクエスと呼んだ。 「だから、クエス。僕の代わりに彼女と、この子を守って欲しいんだ」 「……わかりました。ソウジュ様のためにも、俺に許された全ての時間を彼女とソウに捧げます」 「……いや、だからね? 捧げなくていいんだよって僕は常々言っているよね?」  僕はクエスに、「自分以外の誰かのために捧げる命」として自分を軽んじて欲しいわけじゃない。もっと自分を大事にして欲しいって事あるごとに話しているんだけど、「ソウジュ様がそうおっしゃることに説得力を感じません」と聞き入れてもらえないんだよね。ごもっとも、ではあるのかもしれないけれど。
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