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こいねがうセレネー
天の海に浮かぶ星々の中で、他の誰よりも大きな光を放つ存在があった。それは、彼という星の本体が誰より大きくて内包する光が強い、ということではなくて。ただ単純に、僕という星に最も近い位置にあるからという、それだけだった。そも、星の光は自らが放っているものばかりではないからね。僕達の銀河で自ら光り輝いているのは太陽だけで、僕達はあくまでその光の恩恵で輝いているだけなのだから。
「こんばんは、ソウジュ様。ようやくあなた様のお目にかかることが出来て光栄です。私は月の神・セレネー。かねてから、あなたにお伝えしたいことがあったのです」
いわく、月の役目は地球の運命を見守ること。ゆえに、セレネーは知ってしまった。これからこの星に悲劇が起こることを。
「これからソウジュ様に、この星に罪深き生物を誕生させようと誘惑する者達が接触してきます。その甘言を聞き入れてはなりません。私はあなたという、純白の美しき星を、生態系によって穢されたくないのです」
セレネーからの接触はこの一度限りで、僕は決して、その願いを忘れていたわけではなかったのだけれど。心からの思いやりでそう願ってくれた気持ちを無碍にした、自身の不実に対しては、申し訳なかったなぁと述懐してしまう。
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