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さて、プラネタリウムにち~っとも関心のないコウ君には申し訳ないところではありますが。何せ投影の最中のお喋りは厳禁。私は先ほど鑑賞した星空について早く語りたくて仕方がなかったのです!
「プラネタリウムってすごいですね! 今日は六億年前まで時間を戻して、当時の星空を投影してくださったんですよ!」
もちろん、六億年前の人が現在ご存命なはずがありません。科学的根拠に基づいて計算し、「おそらく当時の星空は、こんな星の配置だったはず」って再現が出来るんだそうです。
「でも、変ですねぇ……私は六億年前の星空なんて、ぜーったい見たことがないはずなのに。なんだかとっても、懐かしい気持ちになったんです」
それも、自分ひとりではなくて。誰か大切な人と一緒にそれを見たような……そんな感覚がありました。
「前世の記憶とかいうやつかもな。こないだの授業で坊さんが言ってた、えーと」
「輪廻転生……って、まさかもう信じてるのか、あの話」
素直は悪いことじゃないけど、そうやって信じやすすぎると、悪い誘いにコロッと釣られてしまいそうで怖い。コウ君はぞっとしたような顔でソウ君を見やりますが、ソウ君はどこ吹く風という感じです。
つい先日、私達の高校ではお寺のお坊さんにお越しいただいて、仏教の特別授業がありました。生物は亡くなると輪廻転生しますが、「生きることは苦しみであり、無こそ救いである」という真理に達し解脱すると、転生の輪から外れて無に還れる。つまり転生の輪から脱け出すことは、生きる苦しみからの解放である。とかなんとか。お坊さんのお話を聞いた私の自己解釈ですので、間違いがあったらすみません。
私はというと、その教えに対しては「本当にそうなのかなぁ」と懐疑的です。もちろん私にだって、悲しいことや苦しいことがないわけではないのですが……。
それ以上に、こうやってコウ君やソウ君と一緒にいられて。お互いの顔を合わせてお話ししたりお出かけしたり出来る毎日が、とっても楽しくて、幸せで。
もし、神様のような方が私達をこの星に作り出し、生み出してくださったのだとしたら……「ありがとうございました」と、お伝えしたい。心から、そう思っていますから。
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