イリサと旅する

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イリサと旅する

「こんにちは、ソウジュ様! 私はイリサと申します。やぁ~っとソウジュ様とお話しが出来るようになって、私はとっても嬉しいですっ」  最初に僕の前にやって来たきょうだい星は、「海の女神・イリサ」だった。彼女は他のきょうだい達と違って、氷雪の形として一部が僕のそばに元から在ったらしい。なにぶんそれが凍り付いていて、海の形を成していなかったため話しかけることが出来なかったという。 「マリア様がおっしゃっていました。これから他のきょうだい達も皆、ソウジュ様の星に集まるのだそうですね。賑やかで楽しくなりそうですけれど、私はソウジュ様とふたりだけで静かに過ごせる時間も捨てがたいなぁって思うのですよ。と、いうわけで。よかったら今のうちに、ソウジュ様と私でこの星を旅してみませんか?」  イリサに手を引かれて、大地に根付くようだった僕の足は、その時初めて動いた。一歩目を、前に踏み出した。赤ん坊が成長過程で歩き方を学んでいくように、ゆっくりとした動きで少しずつ慣れていく。  「雪」以外の自分の実態をほとんど知らなかった僕は、イリサにあちらこちらへ連れられて、自分の姿をようやく知るという体たらくだった。なんだか情けないなぁ、と思うのだけど。 「自分自身の姿が見えにくいなんて仕方ないというか、自然なことじゃないですか。私は自分の星からソウジュ様のお姿を遠目に眺めていたから、ソウジュ様の形を知っているのです。自分以外の誰かがいるから、自分のことが見えるようになったのですよ」  この頃、僕の星にあったのは、たったひとつの大きな大地。それ以外の大部分は溶けた雪が海に変わったものだった。  僕という星に対して彼女という存在は、あまりにも影響が大きくて……その後の僕が選び取る道の先に、常に彼女が立つ姿を想定してしまったのは……仕方ないというか、自然というか。必然だったんだろうと僕は想うのだった。
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