魔法が解ける

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 ヒースの胸から顔を上げられないでいると、可愛いとか、好きとか、もっと恥ずかしくなるようなことを言いながら私の顎を掬い上げる。  そういえば、初めてのキスは私からしてしまっていたのだ。  今更思い出して、動物を飼いならすみたいなキスだったと後悔する。  ヒースに促されるまま目を閉じれば、優しく口付けが与えられる。 「バロッキーでは不良物件だが、住めば都というしな」  愛しくて、愛しくて、笑みが止まらない。 「まだ言うの? こんな優良物件を蹴るわけないでしょ」  バロッキーの森には本格的に鹿が住み着いたようで、結婚式を祝うように物陰からたくさんの気配がしていた。 end
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