皆が優良物件をすすめてくる

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 男性ばかりがわらわらと集い、私を覗き込んだり見上げたりしている。  それぞれに整った容貌をしているが、髪の色も目の色もそれぞれで、似ている感じはしない。  誰も声をあげず、固唾(かたず)を呑んで見つめられる中、私は懐から油紙に包んだ誓約書をとりだした。 「私、シュロの商家のサリと申します。先代の結んだ誓約書通り、こちらに嫁ぎに参りました」    おぉー、と低い嘆声がそれぞれから洩れる。 「ほ、本当に……」 「話には聞いていたが……」 「そうか、国外という手が……」  モゴモゴと驚きの顔で各々何か言っているが、招かれざる客に対して、というには語調がおかしい。  客間らしき部屋に通されると、先ほどの先触れを頼んだ使用人が、にこにこしながら香りの良いお茶を出してくれる。    まあいい、拒まれようが、歓迎されようが、やる事と覚悟は決まっている。  契約書通りなら、親子ほど歳の離れた相手の花嫁となる手筈だ。 「私、この国に骨を埋めるつもりで参りましたので……」
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