魔法が解ける

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 ああ、またルミレスは双子に振られたようだ。  へたれだ、弱腰だと、皆はルミレスを責めるけど、皆だって大して変らないのにな……。    この国の葡萄酒は甘口で仕上げる。  バロッキー家がお祝いで出すワインなんて、きっととんでもなく高いのに、いくらでも飲めてしまう。 「バロッキーの血は見えるから……隠せないから美しいのね」  ほろ酔いで、ヒースにそれとなく零す。   誰が何と言っても、私にとってヒースは美しい。  見た目は変えられないし。  綺麗なものは綺麗だし。  見えない振りはできない。 「サリがそういうなら、俺はこの身も愛するよ」  珍しく気障な言葉が返ってきて、ヒースもほろ酔いなのが知れる。 「嬉しいわ。それってこれから先、私たちの子どもも愛するってことよ」 「こど……?!」  ヒースは芯を失ったように崩れ落ちる。  いい服を着ているのだから、ひざが汚れるようなことをしないで欲しい。  あわてて、引き起こすと、わざとらしく纏わりついてくる。  私たちはまだこの距離に慣れていない。  この距離が馴染むようになって、私たちは家族になっていくのだろう。  「……ヒース、目が光ってるわよ」  言い終わらないうちに、衝立の向こうに引き込まれる。  ぐっと引き寄せられて、抱き込まれる。  あわわわわわ。 「サリ、酔っぱらう前に言っておきたいことがある」 「ええ、なに?」  もう酔っているんじゃないの? 「……俺と結婚してくれ。サリが好きなんだ。俺は、もう、ずっとサリと一緒にいる」  くらくらと酔いが一気に回った。 「サリ、聞こえるか?サリの心臓の音がおかしなことになっている」  抱きしめられて、背を撫でられる。  背中から心臓のところに手を当てられて、自分の拍動を自覚する。 「う……え……?」  心を見透かされて、しどろもどろになる。 「体温も急に上がったな……」 「だって、ええと……」  こんな不意打ち、誰でもこうなる。 「香りも、甘い……」  いつかのように、肩口に鼻をうずめられ、濡れたため息が首筋にかかる。  私は、心臓が爆発しそうになりながら、くらくらとヒースにされるがままになるしかない。  恥ずかしくて、きっとどこもかしこも真っ赤だ。
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