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兄が嫁を貰い、姪が生まれてからは、嫁と姪が忌々しくて仕方がなかった。
借金まみれの商家に嫁がせるにはふさわしい、みすぼらしい娘だと、アニーは兄の嫁のヘレネを奴隷のように思っていた。
弱いものには強いアニーは、ヘレネにだけは女王のように尊大にふるまうことができた。
祖父と兄は赤子の誕生を喜んでいたが、アニーにはヘレネの娘に何の愛着も感じられなかった。
魔物のような目の色をしたヘレネから、魔物のような目をした娘が生まれたのを見て、自分がカヤロナの生贄にならずともいいのだと確信した。
(神は、私にこの魔物の子を身代わりにせよと仰られたに違いない。私は、姉に謀られた被害者だ。父に似て愚鈍な兄は、家の責任をとる義務がある。何より、私のような明るい未来のある、年若い娘が青春を散らしていい理由がない)
アニーは嵐の夜に家を捨てた。
さらに大きくなった借金を残して。
逃げ出した時の気分は最高だった。
それがずっと続くと思っていた。
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