抽象代数学(2)環・体・可換環

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抽象代数学(2)環・体・可換環

さて、今回は環・体・可換環についてお話しします。 まずは前回紹介した『群』の復習をします。 群とは以下の条件を満たすもの。 (1)結合法則を満たす (2)単位元が存在する (3)逆元が存在する 更に、次の条件を満たすものを『アーベル群』という。 (4)交換法則が成立する 今回はこれらを用いて新しい概念について解説します。 まずは、アーベル群(加法について条件を満たす)に、もう一つの演算:*で以下の条件を満たすものを『環』と呼ぶ。ただし、a,b,cは環(集合の一つ)の中に含まれる数です。 (1)a*(b*c)=(a*b)*c 【結合法則】 (2)a*(b +c)=(a*b) + (a*c) 【分配法則1】 (3)(a + b)*c=(a*c) + (b*c) 【分配法則2】 この*というのは、乗法(×)で考えることが多いですが、違う場合もあるのでご注意を。 さて、ここで次の条件を追加で満たせば環は『単位的環』(単位元を持つ環)にパワーアップします。 そして、新しい演算:*についても交換法則が成立する場合、これを『可換環』といいます。 (4)単位元が存在する 環とはこれだけのことです。ただ、環という概念を導入すると様々なことが整理できます。 例えば、私たちが用いている数や式というのは、交換法則・分配法則・結合法則が成り立つという前提で考えているので、普通、数といえば環の要素であると言っても過言ではないでしょう。 とはいえ、私達は大切な要素を忘れています。 『減法(-)・除法(÷)ができない』ということです。 今まで、加法・乗法についてばかり考えていて、減法・除法の事を考えていませんでした。 そして今、環の条件に『減法・除法が出来る』という条件を追加したものこそ、『体』です。 有理数も実数も複素数も体の一種です。 ここで、体の特徴をまとめておきます。 (1)分配法則が成立する (2)交換法則が成立する (3)結合法則が成立する (4)四則演算ができる ここで結構、『代数的構造』の習得はできたと思います。小難しい概念は?といえば色々ありますが、『代数学「概論」』という題名で書いている分には十分でしょう。これでこのシリーズはおしまいです。ありがとうございました。
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