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ゴミのような生き方だ。自分でも、本当はわかっていた。
貴族の家を出たところでそれなりに金は貰っていたし、多少程度に知識も蓄えたのでその気になれば他の暮らしもできたのかもしれない。それこそ、うまく取り入ってどこかの家の養子になれば、一生贅沢をすることもできたのかもしれなかった。
そうしなかった理由は二つ。
一つは、貴族のことも大人のことも一切信じていなかったこと。今は子供なので自分を性欲の対象として見ている連中も、大人になればどうするかわからない。興味がなくなったとポイッと捨てるかもしれない。この国の貴族連中は、貴族でない奴らのことなんぞ無産階級だと蔑み、人間ではないように扱うのが普通だ。ましてや最下層のみなしごや男娼なんて、奴らにとっては塵も等しい存在だろう。そいつらのご機嫌を取って、へらへら笑って生きていくなど絶対にごめんだったのだ。
もう一つは、自分の力で生きていく力が欲しかったこと。大人に取り入るのではない、貴族に甘えるのではない。とにかく知識を、情報を得て一人の力でのし上がらなければならないと思ったこと。
そう、誰かに頼るようなことなどあってはならないのだ。人は結局、生まれついて一人きりなのだから。親にさえ捨てられた自分が生きていくには、自分の身は自分で守れるくらいの力が必要なのだから。
――下層階級に生まれたってだけで、蔑まれて、踏みつけられて、汚泥にまみれて病気になって死んでいく。……スラムでそういう奴らを山ほど見て来た。俺は、絶対そんな風にはならない。何が何でも生きて生きて生き抜いてやる。この国の、クズみたいな奴らに負けてたまるか……!
それがレネにとっては信念であり、唯一無二の“生きていく理由”だった。きっといつまでも、そう大人になってもその考えは変わらないと思っていたのである。
十三歳。
いつもの待機場所である“居酒屋”で、その男に見つかるまでは。
「ちょっといいかな?君」
「え」
綺麗な男、地味な男、醜い男、いかつい男。様々な男と接して、抱かれ続けてきたレネもさすがに驚かされたのだ。
こんな大衆的な居酒屋に似つかわしくない、あまりにも美しい青年がそこに立っていたのだから。
「ああ、失礼。こう言わなければならないんでしたね。貴方が……マシンガン、であっていますか?」
ウェーブしたブラウンの長い髪、宝石かと思うような深い緑の瞳。
それが、彼――ルーイ・クライマーとの出会いだったのである。
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