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4-2 正解(光瑠視点)
シャワーを浴びながら考えを巡らせる。
今日会った瞬間から先週より少し彼女の空気が軽くなったのを感じた。
早く会いたかったので、なんてかわいいことを言ってくれた。平静を保つのに必死で冷たい対応になってなかっただろうか。
先週のデートと初めての行為は夢だったのではないかと思うほど甘美で、今日が待ち遠しかった。
惚れさせなきゃいけないのにこちらがもっと惚れてどうする。
差し当って、二度目はどうするか。
初回はとにかく怖がらせない様に、痛がらせない様に紳士ぶって優しく抱いた。
俺は彼女が好きだから喜んで抱くが、彼女からすれば東雲に課せられた義務だ。
それは百も承知だが、俺との時間を習い事や社交と同じ義務だと思って欲しくない。
楽しんで欲しいし、喜ぶ顔が見たい。
そして最終的に俺を好きになって欲しい。
正解は分からない。彼女は何にでも笑ってくれるから。それでも自分が信じるようにやるしかない。
風呂から上がると先に上がっていた彼女は夜景を眺めていた。
「今日は夜景が良く見えるな」
「はい。良いマンションですね」
「ありがと。でも普段は寝に帰ってくるだけだからあまり見てないかな」
彼女からフローラル系のいい香りがする。いつもきっちりしている彼女のバスローブ姿は艶めかしい。
「あの光の元にいる人たちはどんな時間を過ごしているのかなって」
俺は彼女の肩に手を置いた。
「俺たちは抱き合ってるけどね」
夜景を眺める彼女を抱きしめ唇を重ねる。
夜景もいいけど俺を見てほしい。顔も知らない奴のことより俺のことを考えてほしい。
ゆっくりとした唇を動かし隙を見て舌を差し込んだ。
「んっ……」
彼女の吐息が顔にかかる。唇を重ねている以上に彼女を近くに感じた。
唇を離すと求めるような、訴えるような瞳をしていた。
こんな顔を俺以外の誰にも見せて欲しくない。強く彼女を抱きしめた。彼女は躊躇いながらも背中に腕を回し抱擁に答えてくれる。
「光瑠……」
「ベッド行こうか」
頷いた彼女を抱き上げ寝室へ運ぶ。ベッドへ下す際につい出来心で首筋に痣を作ろうと唇を這わせた。
「やだ、くすぐったい」
首筋が敏感なのか彼女は笑いをこらえきれないようだ。先ほどの色っぽい表情と違ってあどけない笑顔を見せてくれる。俺は我に返って痣つけるのをやめた。
正解なんて分からないけど、この愛らしい笑顔さえ見られば良い気がする。たくさん笑ってもらって自分といて楽しい、抱かれると気持ちいいと思ってもらえるように。
出し惜しみしている場合じゃない。時間は限られているのだから。迷いを捨ててベッドに乗り込んだ。
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