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6-3 苛立ち(光瑠視点)
苛立ちが晴れず、彩音に居心地の悪い思いをさせてしまっている。これじゃ好きになってもらうどころじゃない。風呂場でシャワーに打たれながら今日の不甲斐ない自分を振り返った。
夕食も彼女が好きなウニをふんだんにのせる海鮮丼を出す寿司屋に行ったのに楽しい食事とは言い難かった。
彩音は東雲の一人娘ということを除いても魅力的だ。お近づきになりたい男はいくらでもいるだろう。しかもあの指揮者の板倉は俺と同い年にして国内外のコンクールで入賞している有望な音楽家だ。
彼にしか見せられない世界を持っているだろうと思うと焦る。俺は彼女と同じ東雲の中で生きている人間だから。
俺は彼女に選ばれて側にいるわけではない。
義理の兄という特殊な立場で出会って、東雲家の教育という名目で今彼女と過ごし触れることを許されている。
彼女はいつも笑ってくれているから、このまま機嫌を取り続ければ選ばれるとたかをくくっていた。
実際は恋愛対象という意味では一番遠い存在だというのに。
胸に杭が刺さるような痛みが走る。俺はこのまま悠長に過ごしていいのだろうか。
風呂から上がると彩音は楽譜を見ながらノートを取っていた。
「熱心だね」
彼女がこちらを振り返る。
「いえ、終わりました。今日練習した内容を忘れない内に復習してたんです。兄様にいいところ見せたいから」
彼女は笑顔を向け素早く楽譜とノートを鞄に仕舞う。
気を使って笑ってくれている。でもそのことすら素直に受け入れられない。
俺は彼女の唇を強引に塞ぐ。
「んっ……」
いつもより強く唇を押しつけ舌を動かす。バスローブをはだけさせ露わになった胸を掴み揉みしだく。体をよじる彼女の耳を攻めながら下に指をいれる。
「光瑠、ちょっと止まって」
「やだ。彩音は俺のだ。誰にも渡さない」
彼女を抱き上げ強制的に寝室へ連れ込んだ。
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