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大声をあげて、車道を勢いよくクロスバイクで走り抜けているのだ。さながらジェットコースターのようだったが、世界が回り始めている彼女はまだ足りないらしい。カーブに差し掛かっているのだから、スピードを落とせば良かったものの彼女は体を横に傾けるだけでスピードを落とさない。クロスバイクがケンドラの願いを聞き入れたのか、彼女はカーブを曲がり切れずそのまま車道の外、崖の方へ飛んで行ってしまった。
でも彼女はそこまで恐れていなかった。
「うわ!!!」
斜面を転がったせいで、彼女の自慢の髪の毛には枯葉がついている。
履いていたスキニージーンズも破けているが、体は無事だ。落ちた畑が幸いにも落花生の畑だったのだ。
そう、彼女がここへ落ちるのは初めてではない。高校生の頃に友人と二人乗りをして落ちた事があった。飲酒をしていたのは友人と自分のママしか知らない話だ。
「……あんたも崖から落ちたの?」
転がった先で叫んでいたのは、白銀の髪に黄金色の瞳をした青年だった。
おえ、とケンドラはえづきながら辺りをきょろきょろと見渡す。
「落ちてないけど……君はなんでここに……」
「帰ろうと思ったら落ちちゃったの。ねえ、クロスバイクみてない?ヴァルターのいかしたやつなんだけど」
「君しか落ちてないよ……」
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