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希は大学の休み時間に構内を歩いていた。目指す教室にたどり着き、迷わずに目的の人物に近づく。
「よっ」
「わぁっ!?」
「そんな大きい声出すなよ、目立つだろ」
「あなたが脅かすからでしょ…」
既に教室中の視線を集めていたが、2人はひそひそと会話する。
「てか髪切ったんだ、いいじゃん。ずっと目に入りそうで怖かったんだよな」
「切りましたけど…なんかさらに子供っぽくなってしまったような…」
「いや似合ってる、俺のαDomさまかっこいー」
「後半棒読みじゃないですか?」
「気のせい気のせい。俺?俺は霞見に来た」
「ええ…一応聞きますけどサボってませんよね?」
「ないない。俺教授に褒められてるから。あとは素行がどうにかなればって言われてたけどそれも改善したし」
「見た目変わってませんけどね…まあそれは僕も嬉しいですけど」
「嬉しい?やったー。ちゃんとみんなに挨拶してきたよ。みんなよかったって言ってた。マスターも」
「そういうとこ律儀ですよね…あっ講義始まりますよ、くれぐれも静かにしておいてくださいね」
「信用ないなあ…」
講義が終わったので教室を出て2人で並んで歩く。2人ともこれで今日の分は終わりなのであとは帰るだけだ。
「ちゃんと参加してるなとは思いましたけどノートまで取るとは思いませんでした」
「いや~せっかく参加したんだし?もったいなくね?俺の彼氏様が受けてる授業にも興味あったし。真剣に教授の話聞いてる霞かっこよかったな~」
「それから、聞きそびれましたけど、僕なんかと一緒にいて大丈夫だったんですか?あの、絡まれたりとか…」
「ああ、全然?俺が絡まれることもないし、お前がいじられることもない。如月家が裏にいると知っててそんなみみっちいことしてくる奴なんていねえよ」
「別にそこまで心配…いえ、してました。自分勝手ですみません」
「お前今まで嫌な思いしてきたんだから当然だろ。むしろこれでお前にひどいこと言うやつは減ると思う。あと俺強いし」
「暴力はだめですってば!」
そうこうしているうちに出口に着いた。まだ話があるからと、人気のいないところに連れていく。
「俺、来月発情期来るから」
「ええっ!?」
「いやΩだし来るだろ」
「そうじゃなくて、その、それは…」
「うん、来たら呼ぶから、噛んで?」
「あわわわ…じゃあそれまでにご両親との挨拶を済ませておいた方が…」
「まあそうかな?俺今は寮で一人暮らしだけど」
「そういう意味じゃなくて!番ですよ、わかってます?」
「わかってるわかってる。2人とも、お互い挨拶しに行こうな」
「…はい」
霞はもぞもぞと落ち着きなく、しかし少し嬉しそうに頷いた。
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