『貴方が側にいてくれて嬉しい』を言わせる

2/2
前へ
/26ページ
次へ
side 悠 週末。 珍しく風邪を引いた。会社を早退して、一晩寝れば治ると思っていたが... 「下がらないですね、熱。何か少しでも食べられそうですか?」 「ん...今はいいよ。ありがとうな。」 大きな手が額に当てられる。安心できるその手に頭を撫でられ、心地よさに目を瞑った。熱で頭も体も痛いし、仕事を早退したことは情けないが...こうして蒼牙が側に居てくれることは素直に嬉しいと思える。 「...蒼牙」 「なんですか?」 名前を呼べばすぐに返事をしてくれる、この距離が愛しいと思える。 「ありがとう。こうやって、お前が側に居てくれるなら..たまには風邪を引くのも悪くないな。」 頭を撫でていた手に指を絡めキュッと握れば、小さなため息が聞こえた。 「...そういう可愛いセリフは元気なときに言ってください。我慢するの大変なんですから。」 そう言ってクスクスと笑う蒼牙に、俺も小さく笑って見せる。 ....俺だって我慢してるよ。 心の中で小さく呟く。 そんなこと、今は絶対に言わないけど。 熱が下がるまではこの距離を楽しむのも悪くはないのだからー。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

201人が本棚に入れています
本棚に追加