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side蒼牙 「もちろん」 そう言って合わされた唇。 キスは毎日交わしているのに、どうしてこれほど胸が高鳴るのだろう。 軽く触れて離れていく唇を追いかけ俺からも口付ける。 「ん…」 悠さんの口から漏れる甘い声にもっと…と欲が出て、更に深いキスを仕掛けようとしたその時。 戸の向こうから「失礼します」と声が掛かった。 「ちょ、」 ビクッと身体を震わせ、慌てて離れようとする悠さんの口に深く口付ける。 それと同時に開かれそうになった戸に手を掛け抑えつけた。 「あれ?開かない。」 女性店員の戸惑う声が戸の向こうから聞こえる。 「そ、が…んっ」 「ごめんなさい、もう少しだけ」 キスの合間に囁やけば、大きな手が頬に添えられた。 それを了承の意と受け取り、差し込んだ舌を柔らかい舌に絡める。 チュ、クチュ… 濡れた音が個室を満たす。 上顎を舐め、濡れた舌を軽く吸えば「ふっ…」と鼻に抜けた悠さんの甘い吐息が漏れる。 その吐息に、自分の中にある悠さんへの想いが暴走しそうになる。 ああ、もっと欲しい。 グズグズに蕩けさせて、俺を求めさせたい。 けど、ここでそんなことが出来るはずもなく。 「ごめんね、我慢できなくて。」 最後に唇を軽く舐め、チュッと音を立てて唇を離す。 「くそ、なんか負けた…」 「なにそれ」 クスクスと笑えば、「さっきまで可愛かったくせに」と悔しそうに呟く。 眼の前の額にもう一度キスを落とし細い腰に回していた腕を解けば、悠さんがゴソゴソと席に戻った。 「……………」 無言のままそっぽを向くその耳が赤く染まっていて、照れているのであろうその様子にフッと笑いが溢れた。 「すみません、荷物が引っ掛かってたのかな。」 微笑みながらこちらから戸を開けば、店員がお盆を片手に顔を真っ赤に染めた。 「えっと、ご注文を伺います」 「生中2つ、それと揚げ豆腐と…」 水をテーブルに並べ注文を取る店員に2人分のアルコールと料理を伝える。 「他にも何かいる?悠」 「とりあえず、それでいい」 常識人の悠さんのことだ。 今堪らなく恥ずかしく感じているに違いない。 受け答えの間も、頬杖を付いて店員から顔を背けるその姿が愛しくて。 「帰ったら覚悟してね」 水に口を付けサラッと伝えれば、「お前もう喋るな!」と顔を赤く染めた悠さんにおしぼりを投げつけられた。
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