バカなの?カッコいいの?どっちなの?

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眼の前には大変お怒りモードの怖いお兄さん達。 いや、まぁこの二人からしたら邪魔されたんだから怒るのも仕方ないんだけども。 「てめ、ふざけんなよ」 「いや、あの…」 あたふたしながらも、横目で通路を確認する。 その先には駆け足で去っていく女の子。 うん、良かった。 ちゃんと逃げてる。 「とりあえず落ち着いて…」 「馬鹿にしてんのか?なーにカッコつけちゃってんの、ヒョロヒョロが!」 「ムリムリムリ…!俺弱いから!!」 男の一人に肩をドンッと押され、壁に背中がぶつかる。 素肌に直接響く衝撃は地味に痛い。 「弱ぇやつが出しゃばってんじゃねぇよ!」 「いやいやいや、それも人としてどうかと!」 あわわわわ… 本当にこんな漫画みたいなセリフを直に聞く日が来ようとは… ことの発端は楽しいウォータースライダーを滑った直後だった。 はしゃいでカラカラになった喉を潤すため飲み物を買いに行っていた俺は、少し死角になった廊下の隅から、か弱い声が聞こえたことで足を止めた。 「やめて、離してください…」 「いーじゃん、一緒にあそぼーよ。」 「連れは女の子?案内してよ。」 二人の男が小柄な女の子を挟み込んでいる。 一人は女の子の腕を掴んでニヤニヤと笑い、もう一人は逃さないとばかりに華奢な肩に腕を回していて。 ガタイの良い男二人に無理矢理ナンパされ、青褪め今にも泣き出しそうな女の子。 うわぁ…気分わる… ガタガタと震える女の子が可哀想で、握っていたジュースのカップのフタを開けた。 「あ!!」 「つめて!!」 「きゃっ!!」 背中を向けていた男に近づき、まるで躓いたかのように見せかけてジュースを引っくり返す。 氷の入った冷たいジュースは見事に男の背中を濡らし、ついでに女の子の足にも掛かった。 「うわぁ、すんません!!大丈夫?」 「何しやがる、テメェ!!」 狙い通り俺に意識を向けた男を無視し、女の子を二人の間から引っ張る。 「ごめん、濡れちゃったね。早く洗っておいで。」 「え、あの、」 「ほら、早く早く!」 女の子の背中をトンと押して、逃げるように促す。 その意をちゃんと汲み取ってくれたのか、女の子はペコッとお辞儀をするとその場からタッと走り出した。 「何しやがる!!」 低い恫喝と、鋭い目つき。 女の子に逃げられ、ジュースを引っ掛けられ…彼らにしてみれば散々なわけで。 その怒りが俺に向けられ…今に至る。 「どう責任とってくれんだよ、あぁ?」 「えぇぇぇ、」 「覚悟出来てんだろうな」 「ないない、そんな覚悟!!」 今度は女の子じゃなく俺が壁と男二人に挟まれ、所謂これはピンチなわけで… 男の一人がニヤけた顔で拳を振り上げる。 あぁ…慣れないことしたなぁ。 でも女の子助かったからいっか…。 目をギュッと瞑り、来るであろう衝撃に備えて奥歯を噛みしめた。 どうか死にませんように…! …… ………? ……………あれ? 殴られない? 「……………?」 いつまでも訪れない痛みに、ソッと目を開けてみる。 「わぁ…何、ヒーロー?」 「何やってんの?内藤くん。」 恐る恐る開いた目に飛び込んできたのは… 殴ろうとしてきた男の腕を後ろから掴み、呆れたように俺を見つめてくる蒼牙だった。
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