バカなの?カッコいいの?どっちなの?

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余裕そうに男の腕を止めている蒼牙から後光が見える。 よくぞこのピンチに現れてくれました! 「蒼牙…ほんと、助かった。」 泣きそうな声でお礼を言うと、蒼牙は空いた手で後ろを指差した。 「お礼ならあの子にね。慌てて走ってきたから。」 「え…」 蒼牙が示した方を覗けば、そこには助けた女の子が悠さんの隣に立っていた。 胸に手を当てて不安そうにこちらを見つめてくる女の子の肩を、悠さんがポンッと軽く叩く。 「もう大丈夫だからね。ありがとう、知らせてくれて。」 「はい…」 優しく微笑む悠さんを見上げて、女の子がホッと息を吐き出しているのが分かる。 良かった…もう平気そうだ。 さっきの青褪めた顔が目に焼き付いていただけに、胸をなでおろす。 けど…これじゃあ助けたんだが、助けられたんだか分かんないな。 ハハ…と乾いた笑いを溢していれば、蒼牙に腕を掴まれていた男が大きな声で喚いた。 「放せよ!何だよテメェは…!!」 「あ、すみません。」 蒼牙が軽く謝って手を離す。 見ていた感じ、かる~く手を掴んでいたように見えたけど…結構力入れていたのかな? 男は自由になった腕を「ってぇな…」と擦っている。 「クッソ、テメェ何者だよ。関係ねぇだろうが!」 「引っ込んでろ!俺等が用あんのはソイツなんだよ!」 「うーん…そう言われましても。ケンカはダメですよ、こんな公の場で。」 二人が俺を指差して怒鳴り散らすのを、蒼牙が穏やかに宥める。 その穏やかさが逆に神経を逆撫でるのか、男二人は今にも蒼牙に殴り掛かりそうな勢いだ。 「ふっざけんな!!女の前だからってカッコつけやがって!!」 「危ない、蒼牙!」 いや、殴り掛かりそうな…じゃなかった。 実際に一人の男が蒼牙の後ろから殴り掛かった。 「だから危ないですって。」 まるで予測していたかのようにヒョイッとそれを避けると、蒼牙は蹌踉めいた男を羽交い締めにした。 「………………」 「っ!!」 そのまま男の耳元に何かを呟くと、ニッコリと微笑んでパッと腕を離す。 「ね?」 ニコニコと笑顔な蒼牙と、何故か俺の方を疑うように見つめてくる男。 暫く男は俺を睨んでいたが、腕を擦っていた男に向き直ると「行こうぜ」と苦々しげに促した。 なんだ? 何言ったんだ? 舌打ちしながらその場を離れようとする男二人と蒼牙を交互に見やる。 相変わらず笑顔の蒼牙…その顔は俺をからかっているときと同じもので。 絶対ろくでもない事吹き込んだだろ! と思わず内心ツッコんでしまう。 「大丈夫?内藤くん。」 「お、おう…ありがとう助かったよ。」 笑いを含んだ声でそう言いながら蒼牙が近づいてくる。 ま、何にしても良かった。 これでやっと収まった。 何を言ったにしても、平穏に事が済むならそれが一番だ。 ウンウンと頷いて無事解決したことを噛みしめる。 なのに。 「クソッ…どけ!邪魔なんだよ!!」 「っと、」 女の子と悠さんの側を通り過ぎようとした男が、悠さんの肩をドンッと押した。 その思わぬ男の行動に悠さんが僅かにバランスを崩し、よろめく。 「あっ…うえぇ!?」 ダァンッ!!! え? あれ? 蒼牙何してんの? 『あっ』と思った、その一瞬。 思わず横を確認し、視線を戻す。 そこには。 さっきまで俺の隣にいたはずの蒼牙が、男の行く手を阻むように壁を蹴りつけていた。  
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