バカなの?カッコいいの?どっちなの?

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ダァン…!!! 通路に響く大きな音 「ヒッ!」 「キャッ!!」 急に長い脚で行く手を阻まれた男の小さな声。 口を抑えて固まる女の子。 そして、その側で額を押さえて大きな溜め息を吐く悠さん。 「せっかく人が穏便に済ませてやってるってのにさぁ…」 足を降ろさずゆっくりと顔を上げる蒼牙の表情は、それはそれは綺麗な笑顔で。 けれどもその瞳は全く笑っていなくて… こ、こぇぇ… 俺も初めて見るその笑顔は、正直言ってめちゃくちゃ怖い。 「な、なんだよ…」 何とか絞り出したと思われる男の声は僅かに震えていて、聞いてるこっちが少し同情してしまう。 そりゃビビるよね。 急に美形が一変すると… 「あんた…今何した?」 「はい?何が、ですか?」 あぁ…ついに敬語になってるよ。 人間って、恐ろしい思いすると言葉が丁寧になるもんなんだな。 「『何が?』」 男の言葉をゆっくりと繰り返すと、蒼牙の顔から表情が消えた。 「ひいっ!すみません、その人の肩を押しました!!」 一歩後退る男二人を追い詰めるように、ゆっくりと蒼牙が脚を下ろす。 「だよねぇ…ほんと、よりによって一番しちゃいけないことしたよねぇ…」 「「す、すみません…」」 トーンの下がった静かな声がその場の空気を冷やす。 「おい、蒼牙止めろ」 さっきまでの勢いはどこへ行ったのか。 すっかり小さくなってしまったお兄さん達へ、救いの手が差し伸べられた。 ユラリと男に向き直る蒼牙の肩を、悠さんが掴む。 その声は聞いたこともないくらい緊張に張り詰めていて、側でそれを見ている女の子もまた泣きそうな表情になっている。 でも…蒼牙の怒りも仕方ないか。 大切な人に暴力(というほどでもないが)奮われたら許せないもんな。 俺だってナオちゃんが同じ目にあったら怒るし。 こんなにブチ切れる蒼牙を見るのは初めてで。 そりゃあ…めちゃくちゃ怖いけど、同時にそれだけ悠さんが大事なんだとカッコよくも思える。 そして、こんな状態の蒼牙を止めようだなんて…貴方は勇者ですか?悠さん。 今にも殴り掛かりそうな雰囲気の蒼牙。 その肩に掛けられた悠さんの手に、グッと力が込められる。 「蒼牙、こんなのは触ったうちには入らな」 「いいか、この人の素肌に触れて良いのはな!俺だけなんだよ!!!」 「「「!!!???」」」 「そっちかよ!!!」 蒼牙が悠さんの肩を抱き寄せながら叫ぶのに、思わずツッコミを入れてしまう。 「黙れ、この駄犬が…!!」 「ウグッ!」 続いて響いた怒鳴り声と脇腹を殴られた蒼牙のうめき声に、その場の全員の力が抜けた…。
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