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幽霊を救いました
最上階に着くと、そこはガラス張りになっており、さっきまで夕方だったのにもう真っ暗になっていた。
私は小さな男の子と父親のあとにエレベーターを降り、出られる場所はないか、探した。
奥の方へ真っ直ぐ進むと、小さな白い服を着た女の子がいた。
親とはぐれてしまったのか、泣いているようだ。
声をかけようと近付くとその女の子が、
「ありがとう」
と言って消えてしまった。
さらに女の子を追って奥へ向かう。
するとガラスが重なっているだけのところがあり、そこから出て、家に帰った。
家に着くともう朝になっていた。
誰かがテレビを見ているのか、バラエティー番組のような音がする。
そのすぐあとに
「声優になんてなれるわけないのに」
と弟の声がした。
そうだ。
それで思い出した。
私は、声優になりたかったのだ。
行きたい養成所も事務所も決めていた。
でも今は諦めた。
重度の鬱病にかかり、寝たきりになったからだ。
体が動かない。
トイレに行くのすらも時間がかかる。
意欲が湧かない。
高校生の時から目指していた。
どんなに苦しくても辛くても何時でも今が踏ん張り時だと続けてきた。
そう、弟の言う通り、私はなれなかった。
人と話すのは苦手だったけど、接客業バイトを2つしてほぼ週6、7で入り、発声と滑舌と腹式と筋トレ、ライバー、YouTuber、VTuber、声優の学校の全日制、オンラインの養成所のレッスンもしていたのに。舞台にも出たのに。
何が足りなかったのか。
養成所の特待生も取れたのに。
まだ先がある。
でもそう思うのは、無理をするのは辞めることにしたんだ。
疲れた時には休むこと。
夢は追われるものじゃなく、追うもの。
簡単でとても大事なこと。
忘れてた。
よくある言葉で理解していたはずだったけど、全然分かっていなかった。
私の体はもう動かない。
今は鬱病の薬で無理矢理、動かされてるだけ。
でも、元々精神状態が悪かった。中学生から無気力状態が続いてた。
動けなくなるまで頑張るって自分との約束だったから。
私はここまでやれるだけやったから。
後悔はしていない。
これからどうなるのかは分からないけど、
とりあえず、皆に伝えたい。
無理はし続けてはいけない。
そこで私は目が覚めて、21歳に戻っていた。それからまた夢の中へ。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
作者:このステーキ素敵
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