終曲/帰省

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 試験が全て終了した日の夜、レッスンやアルバイトがある者の都合も加味し、少し遅い時間から、声楽専攻の1年がほぼ全員集まって前期の打ち上げをした。誰かが酔っ払って歌い始めてもそこそこ上手いので、周囲の酔客が拍手して盛り上げてくれるのは、三喜雄の学部生時代の飲み会事情と変わらない。それに、これまであまり話さなかった面々と話せたのは楽しかった。  歌う人間が集まる飲み会は凄まじくなることが多いため、覚悟はしていたが、今回もその例に洩れなかった。店側も常連客も芸大生の乱痴気騒ぎに慣れているのか、大目に見てくれるようなのだが、ちょっと恥ずかしい場面もあった。太田紗里奈に絡まれた三喜雄は、塚山と、何故か北島瑠美に助けられた。その後、紗里奈と塚山が上品とは言えない言い合いを始めて、彼らが以前交際していたことを知る内部進学組が囃し立て、大騒ぎになったのである。どういう訳か自分のせいで彼らが喧嘩になったように三喜雄は感じたのだが、真実を深く追求しないほうがいいような気がしている。  もう少しで紗里奈にホテル街に連れて行かれそうになった三喜雄だったが、瑠美を筆頭とする女子たちの協力で何とかその場を逃れた。これもよくわからないのだが、彼女らは紗里奈と普段仲がいいのに、どうして友人の恋路(?)を邪魔したのだろうか。もちろん三喜雄は紗里奈とそんな関係になることを望んでいないので、ほっとしたが……その代わり瑠美が、塚山くんヤバいよとやたらと言うので、また酔った塚山を泊めなくてはならなくなった。  塚山は家飲みした時ほどは酔っておらず、無事に三喜雄の部屋に到着するなり、詰問してきた。 「おまえこの間、俺は友達ってことでいいって言ったよな?」
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