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日替わり定食の野菜のキッシュセットを持って戻ると、紗里奈はダイエットでもしているのか、サンドウィッチとチルドカップの無糖コーヒーをテーブルに並べていた。彼女は天音が席に着くなり、口火を切る。
「ねぇ、私片山くんと距離詰めたいんだけど、何か邪魔してない?」
いけしゃあしゃあと言う紗里奈に、天音は鼻で笑ってみせた。
「してるとも、片山におまえみたいなあばずれを近づけたくないからな」
「はぁん、ミカエラにでもなったつもり? 片山くんって高校大学とどれくらい女の子とつき合ってんの? 今彼女いないよね? まさか童貞?」
この女は、人の話を聞いていないのか。
「知るか、知っててもおまえには教えない」
三喜雄には、大学の4年間で1人、そこそこ親密だった女性がいたと思う。確かバイト先で知り合った、札幌駅近くの国立大に籍を置く学生だった。1学年上で、彼女が卒業して故郷に帰ったと、三喜雄自身からちらっと聞いた。おそらくそれで自然消滅したと天音は踏んでいる。
紗里奈は探る目線を天音に送ってくる。
「変なの、塚山くんだってずっと女取っ替え引っ替えしてるくせに、何でみっきぃの保護者気取りな訳?」
取っ替え引っ替えしてきたつもりは無いが、高2の頃から彼女のいない時期が天音にほぼ無かったのは事実である。女に対してかなり淡泊な三喜雄が、天音のそういう面を忌避して、友達じゃないと言っている可能性も否定できない。
とりあえず、おまえも勝手に片山を、何処かのネズミみたいに呼ぶな。胸の中で紗里奈に突っ込んだ。どいつもこいつも、俺を苛立たせやがって。天音は平静を装うのが辛くなってきた。
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