ざわつく胸

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電源は、無事に切れていて安心した。 しばらく、スマホの電源を入れるのはやめておこう。 それよりも、彼が心配。 何時に出て行ったかわからないけど、時間が結構経ってるのではないだろうか? 無駄にテレビをつける。 バラエティー番組に笑えなくて、テレビを消した。 さっきのあの人からのメッセージ。あの人は、夫の鏡。 母はあの人の尻拭いをする人生だった。 夫と同じように不倫を繰り返し。 今さら、平気で父親のフリをしてくるなんて……。 母の病気がわかって入院をしても、お見舞いになんかほとんど来なかったくせに……。 やっぱり、私はあの人を頼りたくない。 あの人を頼るぐらいなら、死んだ方がまし。 でも、あの人も義母も夫になんて言われたのだろうか? ちょっと言い合いになったなんて言葉を信じて、私に帰れってメッセージを送ってくるぐらいだから……。 夫は、うまく困ったフリをしたのだろう。 このまま、ここにいて何かが解決するわけじゃないのはわかっている。 それでも、家に帰りたくない。 家に帰ったら最後。 私は、二度と出てこれない。 でも……。 夫が離婚に応じてくれるのだろうか? ベッドに横になる。 このまま、彼に迷惑をかけるわけにはいかない。 彼の優しさに甘えてばかりいてはいけない。 「ちゃんと離婚して。ちゃんと一人で生きていけるようにならないといけないよね」 電源を切ったスマホの画面に映る自分の姿を見ていた。 夫と別れて、ちゃんと生活出来るだろうか? 夫と別れて……。 今は、まだ呪いみたいに夫の言葉がこびりついているだけ。 「大丈夫。大丈夫」 心配しなくても、ちゃんと生活は出来る。 夫と別れたって一人で歩いて行けるんだから……。 私は、もう歩き出してる。 探偵さんに、依頼したんだから。 だから、大丈夫。 「もう、自由になってもいいよね。お母さん……」 本当は、ずっと夫が誰かの元に行く事が悲しかった。 でも、私には繋ぎ止めるものが何もなかった。 だから、ずっと夫との子供が欲しかったのかも知れない。 繋ぎ止める何かが欲しかっただけなのかも。 繋ぎ止められていても、私みたいに嫌な思いする可能性だってあるよね。 子供が出来なくてよかったって今は本当に心から思ってる。 もし、出来ていたら私のように嫌な思いをしていたかも知れないから。 ガチャガチャ……。 彼が戻ってきたのかな? ベッドから起き上がって扉を見つめる。 ガチャガチャ……。 彼なら、入ってくるのではないか? ガチャガチャ……。 心臓がドキドキと音を立てる。 ゆっくりとドアに近づいて、スコープを覗く。 もしかして、彼が奥さんにバレて夫がやってきたのかも知れない。 それなら、帰ってと言わなくちゃ。
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