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「もう、今日は疲れましたよね。明日の事もありますし、
早く休みましょう」
「そうですね。そうしましょう」
「明日、一度、家に帰ろうと思います。あの車の事が知りたい気持ちがありまして……」
「許されるのかですか?」
「はい」
「私も気になっています。自治会長さんが動いていたので」
「では、一度一緒に帰りますか?何かあったら、瑞穂さんは俺が守りますから」
「大丈夫ですよ。家には帰りませんが……外で話を聞くぐらい」
「ですね。俺もそうします」
「それじゃあ、寝ましょう」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
眠りについた俺達は、明け方目が覚める。
朝御飯を食べて、家の近所にやってくると……。
「あんたね、いつになったら改善するんだよ」
「そんな事言われても息子が何もしてくれないから」
「まぁまぁ、皆さん。そうやって目くじらたてなくても」
「あんたは、離れているから何もないだろうけどね。だったら、反対にしろよ。頭から突っ込めよ。そしたら、こいつを庇ってる迫田さん所にもわかるはずだ」
「そうだ、そうだ」
「苦痛を感じろよ。我々と同じ思いしても言えるかやってみろ」
「そうだ、そうだ」
「皆さん、落ち着いてください。今日は、話を聞く事になっただけじゃないですか……そうでしょ?だから、そんなに怒らないで」
「自治会長、あんたどっちの味方だよ」
凄い事になっている。
どうやら、皆さん。
我慢の限界に達したようだ。
「昨夜は、ちょっと静かになってようやく眠れるようになると思っていたのに、本当になんなんだよ。あんた、自分のしてる事がわかってるのか?」
「だから、それは息子であって。私じゃないんです」
「ふざけるな!息子だから何だよ。あんたが産んだ子供だろうが!!自分の子供のしてる事の尻拭いできないなら、親なんかやめちまえ」
「そうだ!そうだ」
「それは、主人が何も言わないから」
「だから何だよ!あんたいくつだよ。年取って主人がって見苦しい言い訳すんな」
「そうだ!そうだ」
「息子には車しかないんです」
「だったら、駐車場借りろよ!年金で払えるだろうが」
「そうだ!そうだ」
どうやら、昨夜は静かだったようで……。
今日、またうるさかったのがわかる。
自治会長さんは、困っている。
だけど、許されないのがわかった。
「許されないんですね。やっぱり」
「無理でしょうね」
「私は悪くない。そう言って、今まで小山田さんは乗り越えてきたんでしょうね」
「いいんじゃないですか……。もう通用しない事がわかるのも」
「それは、私も思います。もう通用しないんです。小山田さんのやり方は……」
みんなは、イライラがヒートアップしていく。
「息子が出て行かないなら駐車場借りろ」
「それは、息子がお金がなくて」
「だったら、あんたが出せばいいだろう」
「それは、主人が……」
「主人が何だ!こんなにまでなってるのに出てこないなんておかしいだろうが」
「そうだ!そうだ!主人を出せ」
「そうだ!そうだ」
束になると人間は、驚くほど強い。
「もっとやっていいって思った俺は最低ですね」
「いえ、最低じゃないですよ。私も思ってます。こんなに許されないんだって」
「あっ!」
「あっ!」
騒ぎの声を聞いて、瑞穂さんのご主人と俺の妻が出てきた。
「どうしたんですか?」
「小山田さんの息子の車だよ」
「いい加減迷惑してたんだよ。常識ないと思って」
「そうだろ?こいつは、ずっと人のせいにばっかりするんだよ。息子がとか主人がとかってな」
「何なんですか、それ。人のせいにするとか最悪ですね」
「だろ!本当に最悪なんだよ」
「大人なんだから、自分の行動に責任とらないと駄目じゃないですか?」
「そうだろ!わかるだろ」
俺と瑞穂さんは、顔を見合わせる。
「今の、どの口が言ってるんだと思いませんでした?」
「思いました。しかも、ちゃっかり輪の中心にいこうとしてますし」
「ですよね。本当に何なんですかね」
「わかりません。ただ、自分達とは違うと言いたいんでしょうね」
「そうだと思います」
誰がどう見ても、今日中に解決しないような気がする。
それでも、自治会長さんは皆さんを必死でまとめようとしていた。
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