プロローグ

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プロローグ

 なぜかアパートでペットを飼うことになってしまった。  こう書くときっと『自分はペットじゃない』と彼女は怒るだろうが、実際そうなのである。彼女は猫だし、彼女の食べ物は私が買ってきているし、彼女の寝床も提供している。ペットと言って差し支えないだろう。猫だし。  ところでうちのアパートは、ペット厳禁である。と書くと、さも私が悪いことをしているように思われる。 いや待ってほしい。決してそんなわけではない。 生まれてこのかた二十二年、人様に迷惑をかけないことしか取り柄のない私である。 信号を無視したことは一度もないし、小中高、そして女子短大では一度も遅刻をしたことがなかった。 品行方正なことにだけは自信のある人間である。そんな私が、アパート規則を破るなどと大それたことなど、できるはずがない。  もし不動産会社と大家さんの手によって作られた、鉄の規則を一見すると破るような行動をとっているとするならば、それは致し方ない成り行きというか、不可抗力というか。  あるいはとてつもない不幸と言わざる負えない。  さてどうしてこんな面倒なことになったかといえば、一言でいえば、コンビニのケーキということになるだろう。
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