月夜の遭遇

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そう言えば我が家は一応「古民家カフェ」にあたるらしいけど 内情はとても古民家とは言えないって、秋さんから指摘されていた カフェのコンロはIHもあるし、トイレは最新式の温水洗浄便座の完全水洗だし、お風呂だってシャワーもジェット風呂も泡風呂も楽しめる仕様で浴室乾燥出来るなんて、ちょっとした高級ホテル並みなんだとか 道路に面したあたし達の部屋の外壁は、ちょっとしたシェルター並みに頑丈らしいし、地下には大型の冷蔵庫と冷凍庫があります で、海側の縁側の雨戸も屋根も同様の硬さにしてあるって…猫さんは何処からそんなお金とコネを… あ、我が家の窓は全部防弾仕様だって、わざわざ実演してくれた事もあった こうして考えると、猫さんと冴香さんは何かからあたし達を守ろうとしてくれている? …違うな…お二方の変な自己防衛本能が過剰なだけだと思う事にしよう 猫さん曰く、「裏切りには慣れてます」からなんだろう と、物思いに耽っていると 「音姫」が流れだし、ペーパーホルダーがカラカラと音を立てる合間に水を流す音が聞こえてきた やっとお役目が終わる…そう思っていると 「美優ちゃん、いつもありがとうね?」 扉が開いて凄く済まなそうに優花さんが出て来た そうだ、ついでにあたしも…そう思って入れ替わりに入ろうとすると、Tシャツが引っ張られる感覚 「美優ちゃん…優花を一人にしないでよ〜…一緒にいてよぉ…」 は?優花さん、このトイレは二人用じゃないですし、いくらお姉ちゃんとは言え、目の前ではちょっと… 「えーー?美優ちゃんがトイレに入ったら優花一人になっちゃうじゃないのぉ…」 …いや、それはそうですけど… と、二人で問答しているとトイレに一番近い、と言っても二部屋ほど離れた、襖が開いて 「トイレの前で何やってるの?」 あたし達を呆れたように見て来たのは、秋さん! これは絶好のチャーンス! 秋さん、実は… あたしと優花さんが何故トイレ前でコントみたいな事をしているのか、掻い摘んで説明する 栗色のロングヘアをポニーテールに、浴衣姿で腕組みして聞いてくれていた秋さんだけど 「はあ…」 溜め息をつきながら頭を掻き、こんな提案をしてくれた 仕事部屋の襖を開けっぱにしておく、あたしは〆切が近いから部屋には入ってほしくない、でもこれなら優花ちゃん一人じゃないでしょ? 確かに 秋さんの部屋は昼間と間違えるくらい明るく、縁側の窓から入る月はブルームーンと呼ばれるくらい大きな満月で近い と言う事で漸くあたしのTシャツは優花さんから解放してもらえた。ちょっと伸びてるような… 相談が纏まった事で、秋さんは仕事部屋に、あたしはトイレに、優花さんは落ち着かなさげに廊下に、 と一旦別行動を取ることに あたしはトイレの鍵を掛けると同時に「音姫」を流し、ペーパーホルダーに手を… その瞬間だった 「で、出たーーーーーーーーーーー!!!!猫さん、冴香さん、秋さん、美優ちゃん出たーーーーーーーーーーー!!!!!」 優花さんの絶叫が島全体に響き渡るくらいのボリュームで鳴り響いたのは… あたしの名前が最後なのが気になるが…
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