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「いやー、残り物には福があるって諺を信じたらこんな事になるとは。聖女ってことなんですかね。そもそも僕は男なのになんで聖女なのか……全体的に細いからとかでしょうか?」
少年は乾いた笑いを溢しつつも、その瞳は相変わらず虚空へと向いていた。
「た、確かに貴殿の纏うオーラは伝承の聖女と一致するのだが……念の為に職を見せてもらっても」
「ええ。何回でも見てください……それで変わるならいくらでも」
そう言う彼の表情からは既に諦めの境地に至っていることが察せられた。
鑑定水晶を幾つも使い鑑定をしたが、結果は変わらず少年の職は聖女のまま。
仕舞いには回数をこなすうちに聖女の称号まで付与される始末。当然彼の口からは魂が抜けかけていた。
「む、確かに貴殿が聖女様なのは分かるのだが解りたくないというか……」
「分かります。聖女っていうくらいだし神に祝福された乙女を想像しますよね。残念、職だけでなく仕舞いには称号まで押し付けられた農家の倅でしたチクショー」
現実から逃避すべくラム酒を呷り始めた彼を騎士団は見なかったことにして王都への帰路に着いた。見た目だけなら全然聖女なのになと思いながら。
余談だが神への恨み言を叫びながら聖女が単身魔王城に乗り込み、あっさり魔王軍を乗っ取ったのはまた別の話。
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