聖女さんは認めない

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 魔王が復活して数年。王都の南西に位置する村にて、遂に聖女が見つかったとの一報を受け駆けつけた騎士団を迎えたのは儚げな美少年だった。 「この村に聖女様がいらっしゃると聞いたのだが……どちらにいらっしゃるか教えてくれないか?」 「あ、ああ聖女ですね……それって(ジョブ)の聖女のことですか? 聖母の如く優しい女性の略称ではなく」 「ああ。職だと我々はそう聞いているのだが」  騎士の一人が応えると少年の態度は豹変した。人好きのする表情は蒼白へと変わり、彼は蹲ると譫言のように「いや、けど聖女って言うくらいだし女ですよね……普通。いや、けどそもそも聖母みたいに優しい女性なんてこの村には居ませんし」と繰り返した後、生気の失せた瞳で虚空を見つめた。 「して、聖女様はどちらへ?」  そんな少年に無情にも問いかけた騎士に対して、彼は長い溜息を吐くと。 「……この村の女性は皆近接物理職なんです」 「…………」 「姉は竜騎士、妹は大戦士。酒屋の娘に至っては狂戦士(バーサーカー)。まあ、ここの女性はそういった物理職を授かってしまったわけで」 「いや、しかし我々はここに聖女様がいると……まさか」  騎士の頬を冷や汗が伝う。
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