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プロローグ
「アゲハ=ルカ、僕の可愛いお姫様。ほらこれ、見てごらん」
そう言って、彼が差し出してきたのは小箱に入った一匹の蝶。
「うわぁ、綺麗ね! ヘリオ、これはなんて名前の蝶々?」
「名前はまだないんだ。生きてる姿を見た人もね。だから探しに行くんだよ。そして、必ず僕がこの蝶の生きてるところを見つけて、僕のお姫様と同じ『あげは』って名前を付けるよ」
そう言った男、ヘリオは私の父ではなく、母の恋人の一人に過ぎなかった。それでも、彼は私を可愛がってくれた。まるで本当の父親のように。
彼との思い出が、子供時代の……いや私の人生の中で唯一の暖かい記憶だった。
結局は彼も他の人間と同じ、ただの身勝手な男だったとしても。それでも、私は彼に憧れた。
彼と同じ冒険家になろうと決意するほどに。
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