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「アゲハ! それは絶対に許さんと言ったはずだ!! もし、お前がそういうつもりなら、我が家門、いや貴族としてお前が持っている権利を全て置いていけっ!」
「わかりましたわ、お祖父様。私アゲハは、今日この時よりルカ一族として持ってる権利を捨て、今後一切リブロに私の名前で何も要求しません。これでよろしいですか?」
ルカの本家屋敷、その執務室。豪奢を極めた調度品に囲まれるのも今夜が最後だ。その決意を胸に私はしれっと言ってのけた。お祖父様の顔が真っ赤になる。
「親を失くして、哀れだと八年間育てて来た恩返しがそれか!? 父親のわからぬ私生児など打ち捨てておくべきだったわっ!!」
お祖父様の魂胆はずっと分かっていたのですけどね。
「お祖父様が私に対してなさったことが、愛情からではなく打算と多少の憐憫からだったとしても、私に授けてくださった知識や環境には感謝しています。たとえ、私がのたれ死んだとしても、最後の時にお祖父様に対して呪詛は吐かないとお約束しますわ。では」
二十歳の成人の祝いを終えた次の日、私はルカの屋敷を出た。これから冒険家としてやっていくのだと強い決意を胸に。
そして、私は漂泊の旅を十年近く続けた。風の向くままま気の向くまま、危険極まりない航路で貴重な荷を運び、新たな惑星が見つかったと聞けば船を向けた。
運よく、新種の鉱物や動植物を発見することもできた。
だが、あの時ヘリオに見せられた蝶はまだ見つかっていない。
ヘリオがあの蝶を見つけにどこに向かったのかもわからない。
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