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私が十二の誕生日を迎えるわずか一ヶ月前、母とヘリオは行き先は告げず『あげは蝶』を探しに行ったっきり戻らなかった。
乗っていた宇宙船が何かの事故に遭った。いや、母は事故に遭わされた。と言うのが周囲の出した結論だった。
母は、リブロ王室のかなり高位の王位継承権を持っていて、その存在が邪魔になりかねないと見た誰かの手によって暗殺されたのだと。
記憶の中の母は男を侍らせて、享楽にふけることしかしてなかった。
彼女に、王位継承の野望があったなんて信じられない。それでも、母は真の部分で賢かった。だから、危険視されたのだろう。
その母の唯一の子どもである私にも、暗殺される可能性は常にあった。冒険者になってからも、何度か命を狙われたのだ。
いくら王位継承権を捨てたところで、私を警戒する人間はいなくならないのだろう。
それでもいいわ。
この十年間暗殺者が現れるたびに、リブロを離れた日、宇宙港で眼下に浮かぶリブロ本星の青の荘厳さを眺めながら考えた事を思い出していた。
私を大切に思う者は私以外いないのだから。暗殺されたところで、何の問題もない。
母は私を産んだだけで、娘に一切の興味を持たなかった。
ヘリオは私のことを大切だといいながら、どんなに待っても帰ってこなかった。
お祖父様は王位継承権のある孫娘を、自分の権力を拡大する道具だとしか思わなかった。
社交界の取り巻きも同じ。
ある程度の権力が自分にあると自覚してからは、心を許せる友人など怖くて作れなかった。
私のそばには誰もいない。愛情など求めた記憶もすでに遠い。
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