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<アゲハ様。もうすぐGY76に着きますね>
宇宙船の船長アンドロイドが私に操船モニタを示した。この船に乗っている人間は私だけ。私の暗殺に誰も巻き込まないように、船員は全てアンドロイドだ。
「ええ、そうね。……GY76も青い惑星なのね」
モニタには見る人に感動を呼び起こす、美しく青く輝く星が映っていた。
<大気分析終了しました>
<人類生存可能惑星との調査報告は間違っていません>
<着水ポイントを探します……>
報告をあげていた船員アンドロイドたちの動きが一瞬止まった。
「どうしたの?」
<アゲハ様。あの星から救難信号が出ています>
「え? この星系を訪れる船なんてなかったんじゃないの?」
<はい。ですが、確実に救難信号です。型式からいって、信号は十数年前のものです>
まさかと思った。まさか……ヘリオ?
「救難信号の近くに降りられる?」
<可能です。着水ポイントを設定>
アンドロイドの言葉を聞きながら、自嘲の思いが強くなった。
私はあの星で彼との再会を望んでいるのか? いや、ずっと期待していたんだ。もう一度彼に会って、『僕の可愛いお姫様』と、そう言ってもらえるのを。
馬鹿馬鹿しい。あの星で彼が生きているとして、それがなんだ?
私はもう大人で、彼の『可愛いお姫様』じゃない。
でも、ヘリオ。どうかこの星で生きていて。
私の祈りは彼が遭難してからずっと続いていたのだと、その時はっきりと自覚した。
私は、ヘリオに会いたくてここに来た。
『あげは蝶』を探すなんてただの建前。
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