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「こ、これは!! 大発見だ!!」
のどかな田舎町に叫び声が響く
興奮した男が食堂で騒いでいた
「どうしたんですお兄さん そんな大きな声を出して」
「いきなりすみません おばあさんの後ろに飾ってあるその絵が気になりまして」
「あぁコレですか 素敵でしょう、ダンさんの絵ですよ」
「ダンさん……? ダン・フェネールの事ですか?」
「ダンさんはダンさんですよ プレゼントしてもらったんです」
「すみませんが詳しく見せていただいても?」
「えぇもちろん ご自由にどうぞ」
穴があくほどマジマジと眺める
こんな田舎の小さな食堂にどうしてこの絵が?
緻密な筆使い、淡い配色、見る者を惹きつける構図
間違いなくダン・フェネールの絵だ
彼の作品は大人気
世界中の美術館やセレブが求めるが、作品数がとても少ない
そのため高値で売買される正にお宝
そんな絵がいま目の前にある
「おばあさん、非常に失礼な事を聞いてもいいですか?」
「ふふっ 言いたい事はわかるわよ この絵を売ってほしいんでしょ?」
「こんなお願いは本当に失礼だとわかっています それでも私はこの絵が」
「いいわよ どうせ私もこの先長くないわ 欲しい人に貰われた方が絵も幸せよ」
「ありがとうございます!」
男は200万円の小切手を切る
これでもかなりお買い得だ
さらに高い値段で売れる上、自分の名前に箔が付く
“誰も知らない新しい絵を発見した”という名誉は何ものにも代え難い
満足気にホクホクとした顔で帰っていった
「おじいさん あの絵が200万円で売れたわよ」
「小切手か?それならすぐに換金してこい」
「えぇそうするわ もう少し高く売ってもよかったかしら?」
「あんな偽物このくらいがちょうどいいさ 次の作品も出来上がってるから飾っとけ」
「今度もまた素敵ね 騙さなくても普通に売れるんじゃない?」
「別に騙しているわけじゃない 勝手に勘違いして買っていくだけさ 男は怪しんでいなかったか?」
「宝物を発見した喜びで何も見えていなかったわ」
「だろうな 名誉は瞳を曇らせる 今後のニュースが楽しみだ」
1週間後 新聞に小さく記事が載った
「美術商の大発見 ダン・フェネールに似た素人の絵を200万円で購入」
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