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占い
占いの館では、水晶占い、カード占い、手相占いの中からどれかを選ぶシステムになっていた。
僕はカード占いを選択した。
受付を済ませて部屋に入ると、テーブルを挟んでお面を被った人が座っていた。
「マリアと申します。こちらへ座って下さい」
その人は、僕を目の前の席へ促した。
声からして女性だろうか?
僕はその人の言われた通りにした。
占ってもらった相手は、山本冴子という女性である。
僕と同じ部署に勤める5つ上の先輩であり、一目惚れした人である。
彼女は、容姿端麗で仕事も出来る。
リーダー的な存在で、みんなからも一目置かれていた。
大卒新入社員の僕と彼女に接点はなく、仕事面でも雲泥の差があった。
それでも、僕は彼女と何か接点を持ちたくて仕方なかった。
「貴方の名前は」
「佐伯慎也です」
「何を占いたいですか」
「今、好きな人がいます。5つ上の先輩で冴子さんと言います。その人と結ばれたいです」
僕は小学生並みの想いを占い師にぶつける。
占い師はカードを切って、僕の目の前に並べて、一枚のカードをめくった。
「残念ながら、好きな人との縁はなさそうですね」
あまりにもストレートな言い方に、僕は愕然とする。
「もう少しオブラートに包めよ」
そう言いたかったが、ショックの方が大きかった。
そんな気持ちでいる僕をよそ目に、占い師は淡々と説明を続ける。
めくられたカードには、月が描かれていた。
このカードには『不安、憂鬱、迷い、現実逃避、将来が見通せない』と言う意味が込められているそうだ。
要するに、彼女と縁がない。
そういう結論だった。
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