午後の仕事

1/1
前へ
/9ページ
次へ

午後の仕事

昼休みが終わり、僕は仕事に取り掛かる。 「先輩、これ出来ました」 「そしたら次これを頼む」 「はい」 午前中の悩みは何だったんだろう。 そう思えるほど仕事が捗った。 遠くから、冴子さんがこっちを見ている。 僕はそれに気付き、冴子さんと目を合わせる。 冴子さんはニッコリ笑って頷いてくれた。 「好きな人に近づけた」 そう思うと、僕は嬉しくてたまらなかった。 今日は、残業をせずに済みそうだ。 仕事がはかどると、こうも違うのかと思った。 「佐伯帰るぞ」 「すいません、これだけ済ませたら帰ります」 「そうか、それじゃおつかれ」 先輩社員たちは、会社を後にする。 計算通りだった。こんなに上手くいくなんて、本当に今日はついている。 作業なんて全然ない。残業のふりした理由は、冴子さんと一緒にいたかったからだ。 今、フロアーには僕と冴子さんしかいなかった。 「お疲れ様です」 「お疲れ様、頑張ってたね」 「はい、山本さんのおかげです。ありがとうございます」 「それじゃ、私達も帰りましょうか」 「山本さん、今日って予定ありますか?」 「ごめんなさい。私この後予定があるんだ。また今度でいい?」 「あっ、いいんです。ちょっと訊いてみただけですから、お先に失礼します」 僕はそう言って、フロアーを後にした。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加