叔父のノート

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泣き続けるばあちゃんの後ろで、父さんが忌々しげに吐き捨てるように言う。父さんは「こんな気持ち悪いもんばっかり集めやがって……。金の無駄だろうが!」と言いながら、手に待っていた鬼のお面を叩き付けるように乱暴に置く。ばあちゃんの鼻を啜る音が大きくなった。 「あなた、お義母さんの前でそんなこと言わないであげて。あんなことがあったのよ」 部屋に入って来た母さんは、叔父さんの部屋に大量に置かれているものたちを見て一瞬嫌悪を顔に出したものの、すぐに父さんを窘める。そして、ここにいては父さんがまたばあちゃんに酷い言葉を言うと思ったのだろう。父さんの手を引いた。 「(けい)、母さんたちはちょっと買い物に行ってくるわ。遺品整理、おばあちゃんと進めておいて」 「……わかった」 母さんにそう答えた後、俺は山のように積まれたものたちを見る。お世辞にも「綺麗」「片付いている」と言えないこの部屋は、不気味やお面やオカルト雑誌などで溢れ返っている。 その量の多さに俺はため息を吐きたくなるものの、隣にいるばあちゃんは泣いてばかりで手が進んでいない。仕方なく、俺一人で遺品整理を進めることにした。
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