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あれから何度訪れても、冬という季節は大嫌いだ。
こんこんと底から冷える寒さも、肌を刺すような空っ風も、息をするのも苦しい夜の質量も。凍えそうな早朝が迎えに来ようものなら、俺は二度と帰ってこない天使にせめてもの手向けとして涙を流す。
俺が7歳になる年の冬、聖夜の鐘がこだまする夜に産まれたアリーシャは微笑むだけで花が咲くような赤子だった。
「ママ、アリーシャが笑ったよ!」
「えぇ本当ね。きっとアリーシャもアランが大好きなのよ」
「本当に?」
出産を終えた母、メアリー・グレイに寄り添って彼を覗く俺に、彼女は「勿論」と笑い掛ける。
──『アリーシャ』。
微笑む母が弟に零したその名は、れっきとした女性名だ。それでも愛らしい天使にピッタリ嵌った名前を気に入った当時の俺は、何度も弟の名前を呼びながら撫でていたのを覚えている。
目付きの悪い俺と違って愛嬌のある菫色の瞳を持つ彼は、マフィアとして名のある我が家の息子とは信じられない程の宝石──それこそ天からの賜り物だと信じて疑わなかった。
顎の辺りで切り揃えられた癖のない綺麗な髪は両親から受け継いだグレーで、俺の燻んだ色味より数段明るい色を呈する彼の髪は光を受けてキラキラと輝くシルバーに近い。素直で純粋、誰に対しても心優しいアリーシャは誰に紹介しても誇れる自慢の弟だった。
そう、あの日までは──。
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