1 一番うしろの美少年

2/6
前へ
/96ページ
次へ
 真うしろに男の子が座っているから、ちょっとだけ背中を意識しちゃうけど。 「発車します」  運転手さんのアナウンスで、バスが走り出す。  バスのなかは、私と男の子以外に乗客はいない。  中学校まで片道一時間だけど、こんな感じで三十分くらいはこのまま貸し切り状態。  毎日バスに乗って通学するなんて大変だなって思ったけど、転校してきて二週間経った今では、すっかり慣れちゃった。  心地いいバスの揺れを感じながら、窓の外をのぞく。  自然ゆたかな山道だけど、バスから見える景色は、あんまりキレイとは言えない。  まだ九月だから色のない葉っぱばかり。  じっとしているのも退屈。  私はカバンから数学のノートと、鉛筆を取り出した。  すこしでも勉強しよう! ……って思ったのに。  はっ! しまった!  空白のページを見ると、つい無意識に絵を描こうとしちゃってる。  もう、私のバカ! 絵はやめるって決めたはずでしょ!  ため息をつきながら、パラパラとノートをめくる。  すると、ページにはさまっていたチラシに目がとまった。  『第四十三回 全国中学生美術コンクール』。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加