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1 一番うしろの美少年
プシュー。
六時三十二分。『吉野入口』停留所。
三分おくれでやってきたバスが、目の前で停まった。
私の一日は、このバスに乗り込むことからはじまる。
開け放たれたバスの扉に手をかけ、トントンとステップをあがっていく。
あ、今日も乗ってる。
一番うしろの席に座っている、おしゃれな私服を着た男の子。
いつも目深に帽子をかぶっていて、両耳にはイヤフォン。
帽子からでもわかる白い肌に、大きな目が印象的。
窓わくに肘をついて外をながめる横顔は、まるで絵画の中から出てきた人みたいに整っている。
たぶん私と同い年の十二歳くらいだと思うけど、クラスメイトの男の子とはどこかちがう、人の目を引きつける不思議なオーラみたいなものを感じるんだ。
彼とは毎朝同じ時間のバスに乗っているから、私からすればすっかり顔なじみ。
といっても、もちろん話したことなんかない。
一度、定期券を車内でひろってもらったことがあるけど、きっと忘れちゃってるよね。
バスが発車するまえに、私はうしろから二番目の席に腰をおろす。
車内を見わたせるこの席が、一番のお気に入り。
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