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「なにしてんのー?」 「わお」  視界の端から突然にゅっと人の顔が現れて、私は思わず声を漏らす。さっきまで教室には誰もいなかったので完全に油断した。 「なんだ夏奈かあ。びっくりしたあ」 「こっちもまさか海外ドラマみたいな驚き方されると思ってなくてびっくりだよ。で、なにその紙切れ」 「言い方ひどい」  私の言うことなんて聞きもせず夏奈は机の中でこっそり広げている紙に興味津々だ。この子は昔から何かと目ざとい。  しばらく動かずにいたが、どうやら夏奈に立ち去る気は無さそうので私は小さくため息をついて降参した。 「夏奈さ、榊原くんって知ってる?」 「さすがに隣の席くらいは」 「なんかかわいくない? 仕草とか」 「そうかねえ。てか、え、それってもしかして」 「うん。だから恋したいんだよね」 「……ん?」  夏奈はきらきらと輝かせていた目の照度を急に落とした。少しの間、右上を向いて思考をめぐらせる。 「……えっと。かわいいって、つまりそういうことじゃないの?」 「かわいいはかわいいでしょ」 「おおぅ」  おかしな声を出して首を傾げる夏奈。何か変なことを言ってるだろうか。 「かわいいじゃなくて好きになりたいの。恋がしたいのよ」 「恋はしたいんだ」 「恋しないと告白できないでしょ」 「ぅおう」  また夏奈は変な声を出した。付け加えるように「そこはグイグイいくのね」とさらに不思議そうな表情を浮かべる。
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