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 どうやら今日の榊原くんはいつもよりお腹が空いていたらしい。  彼は四時間目が終わるなりお弁当をかき込むように頬張った。さっきの授業が体育だったせいもあるかもしれない。  パンパンに頬を膨らませて口を動かす榊原くんはまるでハムスターのようで、けれど顔にはいつもの気怠さが浮かんでいて、そのギャップが愛らしさを倍増させる。  私もつい自分の箸を止めて見入ってしまった。その際、視界にどうしても入り込んでくるにやにや顔は見えないフリをする。 「おーい、みやこー。おーいおーい」 「今見えないフリしてるんだから存在感出さないで」  席に座ったまま頭をぐらんぐらんと左右に揺らして、このクラスで一番の親友は私の恋路を塞いでくる。  今ここで私の中に眠る透視能力が覚醒しないかと期待したがそう都合よくはいかないので引き続き見えないフリをした。 「ねえ見えてるんでしょ。わたし知ってるんだから。ねえねえ」 「霊感ある人に話しかけてくる幽霊みたく言わないで」 「え、都子って幽霊とか見える系?」 「幽霊も隣のかまってちゃんも見えません」  昼休憩に入り、お弁当を食べ終えた彼が席を外したのを見計らって私はスタンプを押した。  とん、と指先で音がして、またひとつ私の想いが積み上がる。
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