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澄ました顔で、少女の淹れた茶に魔女は口をつけた。死神もそれに倣う。そして、少々眉をひそめた。世辞にもうまいとは言い難い、なんとも形容しがたい味だった。香りが飛んでいるせいか、温度が低いせいか、いろいろと指摘することはできそうだが言葉にしなかった。
「あの子は記憶が飛んでいる。ブラウニーとしても、人としても。あの子ができることが一体どれだけ残っているか、私もまだ分かっていないよ」
「それはそれは」
かの妖精――屋敷手伝いをするブラウニーという種らしい――が、定命を覆し長い生を与えてくれと望んだ相手は、病床に伏していた余命幾ばくもない少女だった。
それが、彼女だ。名を尋ねることはしなかったが、そもそも名を覚えてもいないかもしれない。
魔女の声音にどこか後悔のような色を見て、いささか不可解さを声音に乗せる。
「きみは分かってただろ?」
魔女が少女の定命を覆す対価として、ブラウニーの定命を幾分か利用し操ったのは死神も視ている。
その結果引き起こされた副作用が、今少女の身に降り掛かっていることだ。
後天的に創り出された、人と妖精の混じり仔。
「責任でも取ったつもり?」
「ここに居たいと言うから住まわせているだけだ。辺りのモノたちと何も変わらん」
実際には、他に生きられる場所もないのだろう。魔術を扱わない人間には彼女が見えるかどうかも怪しいところだ。
「人がいいねぇ」
「お前とは違ってな」
そう、魔女はうまくもない茶に口をつける。
「そういえば、そろそろみたいだけど」
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