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2024/8/3(土)
来て良かった。
家族の中でも父と相性が悪い姉を迎えに行く算段を立て、内緒で空港まで自分だけが迎えに行き、父が出掛けている間にこっそり家に帰ってお土産だけを置いていく。
母は姉の帰省を喜んで出迎えた。
実は花火大会の会場近くに祖父母の家があるから毎年その時期になったらお盆よりも先に帰省して家族で祖父母の家に遊びに行くのだが、祖父がコロナに罹ったという連絡が金曜にあったのだ。
その日の夕方は自分も姉も用事があったから、わりと直前まで飛行機の便をキャンセルしようかしまいか悩んでいた。
母の希望たって姉は帰ることになったが、幸い祖父もコロナに罹ったというわりには緊急入院先で「暴れるようなら早めに帰ってもらう」と言われ、入院先でも悪化するよりも元気すぎて困るという話を聞かされたものだから、当初の予定どおり帰省することになった。
思わぬアクシデントもあり、母の心労も心配だったけれども、不幸中の幸いという形でことが収まりそうで良かった。
父が出先から帰るのが14時で、また夜釣りに出ていくのは15:30。
姉の迎えは自分一人で行き、そのまま家に一瞬だけ荷物を置きに帰ってから車で出かけた。
猛烈な暑さは睡眠不足の身体に堪えるけれども、今が踏ん張りどきだ。
街中のコインパーキングに停めて暑い中歩いてカラオケ屋まで行って3時間ほど歌ってまた運転して今度は買い出しにまた車を出して晩御飯。
とうとうエネルギーが切れた。
花火大会は20時開始だから19時前になると道が混雑する。
それもあって寝るわけにもいかなかったけど、疲労と晩御飯の満腹感で「少しだけ」といって1時間も寝てしまった。起きたら18時だった。
気付けば姉と母の間にのんびりとした空気が流れていて、母にいたっては長電話をしていた。恐らく叔母さんだろう。これは長くなるぞ。
電話が終わり、自分が起きていると分かると姉はピアノを弾き始めた。
まったりした時間だ。
なんとはなしに自分もぼんやりとしていると19時になってしまい、半ば花火大会に間に合わせることを諦めていたのである。
案の定だった。途中から道が混みだし、20時になっても着かないで道中の車内で次々と打ち上がる花火を見る。
花火客が多いせいか警察もあちこちに出回って「この先直進禁止なので迂回してください」と注意していたけど、家に帰ることを伝えて何とか祖父母の家に着いたのが20:50。
諦めていた。花火も車を停めてから一度上がっただけでも打ち上がる気配もない。
せめて出店に行きたいという姉とともに二人で会場に行って出店を巡っていると。
ディズニーが夜空を華麗に舞い上がった。
複数の光るドローンがディズニーキャラクターを花火のように打ち上げるイベントがあり、それを間近で見ることが出来たのだ。
綺麗だった。初めて見るディズニーの光に圧倒された。
一生懸命に写真と動画を撮っていると、今度は巨大な花火が打ち上がる。
忙しかった。感情も撮る手も忙しかった。
隣ではしゃぐ姉と互いに「来て良かったね」「諦めないで良かったね」と言い合いながら思い思いに撮って、その目に夜空の喜びを、光を焼き付けた。
嬉しかった。
実はこの一週間なんだか疲れていたから、その苦労が少し報われた気がした。
頭の中で何度も今日の予定における辻褄合わせや矛盾がないかを確認していた。抱えていた仕事も終わらせ、やるべき小説の修正もこの瞬間を迎えるためだけに頑張ってきた。
来て、良かった。
疲れた身体で家に帰ったら、ようやく一息吐けた。
風呂から上がったら、もう少しも動けなくなった。
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